first 21

 

 でも、恐かった。嫌だった。

 哀しくて、悔しくて、吐きそうなほど気持ち悪かった。

 なにより、油断した自分が、赦せなかった。

 

 私はしっかりしてなければ、駄目なのに。

 一人なんだから。

 

 けれど、ナルが迎えに来てくれて、なんだか、らしくないほど優しくしてくれて、悪くないと言ってくれた。

 

 嬉しい。

 すごく、嬉しい。

 

 でも、嬉しすぎて、恐い。

 

 ナルの側に居ることは、心地よいばかりじゃない。辛いことも、哀しいことも、たくさんある。でも、すごく、暖かい。

 一人じゃない、と思える。

 でも、また、一人になったら‥‥‥前のように普通で居られるだろうか。

 心地よすぎて、駄目になりそうで、恐い。

 その強い力で抱き締められると嬉しいのに、逃げたい時もある。近付きすぎて、深く、傷つくのが恐かった。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥lastkissmenu    back   next