first 20
寝顔を眺めていると、不意に腕が動いて、さらに引き寄せられる。 強い、力で。 その腕は細いけれど、本気になったら、麻衣はかなわない。 それが、男と女の差というものだと、昨晩、思い知った。
腕を掴まれたあの時、油断していた。 近付かれて、なんだか嫌な感じがしたけれど、なんとかなると思っていた。 なんとかできると、過信していた。 でも、男の人が本気になったら、簡単に捕まって、逃げられない。 周りに居る人たちが優しい人ばかりで、そんな風に扱われたことがないから、分かっていなかったのかもしれない。頭では、腕力が違う、と分かっていたのに、本当には理解してなかった。 だから、あの時、哀しくて、悔しくて‥‥恐かった。 周りに人がたくさん居て、すぐ近くに友達が居たけれど、誰も助けてくれない。 周りの人は大したことではないと思っていただろうし、友達は、自分のことで精一杯で‥‥‥責めるような目で見ていた。
たかが頬にキスされたくらいで、大げさかもしれない。
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