first 18
「行きたくないのに約束を守ったことか?それとも、腕を掴まれて頬にキスされたことか?」 麻衣は、目を伏せた。 「‥‥‥‥‥‥両方」 「それでなぜ、自分を馬鹿だと思うんだ?」 「‥‥‥‥‥‥」 麻衣は答えない。ナルは深い吐息を吐き出した。 「どちらも麻衣に責任はないな。行きたくないと思ったのならばもっとはっきり意志表示すべきだったかもしれないが、誰にも迷惑は掛けていない。腕を掴まれたことを油断した、隙があった、と思うのならば、それは勘違いだな」 「‥‥‥‥‥‥勘違い?」 「本人の意志を無視して腕を掴む奴が、恥知らずなだけだ。‥‥‥麻衣は、なにも悪いことはしていない。そうだろう?」 「‥‥‥‥‥‥うん」 「だったら、忘れろ。おまえが気にすればするほど、恥知らずが喜ぶだけだ。僕が馬鹿だと言ったのは、必要のない自己嫌悪をしているからだ。‥‥‥分かるな?」 「‥‥‥‥‥‥うん」 いつもからは考えられないほど優しい声と、言葉に、麻衣は頷いた。 「‥‥‥‥‥‥ありがと」 返事の代わりに、優しいキスが、頬に、額に、唇に落ちる。そして、慰めるように、何度も髪を撫でられた。その手の暖かさが、泣きそうなほど気持ち良い。
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