first 17

 

 なんとも思っていないのならば哀しいが、けれど、怒ってほしいわけでもないのだ。ただ‥‥‥‥‥‥悔しい。

 あんなことをされたことが。

 ナルに見られたことが。

 悔しくて‥‥‥。

 そして、

 

「‥‥‥‥‥‥なにをしている?」

 

 低い声に顔を上げると、眉を顰めた綺麗な顔が間近にあった。

「‥‥‥‥‥‥カオ‥‥‥洗ってるの‥‥‥」

「見れば分かる」

「‥‥‥‥‥ごめんね‥‥‥」

「なにが?」

「‥‥‥‥‥‥迷惑掛けて‥‥‥」

「いつものことだ。気にしていない」

 素気ない言葉と一緒に、白い形の良い指が、濡れた頬を撫でる。

「馬鹿だな」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 麻衣は、俯いた。俯いた麻衣の顎を掴んで上向かせて、ナルは目を細めた。

「今日は言い返さないのか?」

「‥‥‥‥‥‥馬鹿だと、思うから」

「なぜ?」

「‥‥‥‥‥‥」

‥‥‥‥‥‥‥‥‥lastkissmenu    back   next