だから、こんな夜遅く、ここに居るのは初めてでどうしていいのか分からない。

しかも、綺麗な綺麗な横顔は、いつもとなんにも変わらない。

　変わらないように見える‥‥‥‥‥‥。

「お茶、煎れてくるね」

「‥‥‥ああ」

　とりあえずいつものように言うと、いつものように素気ない返事が返ってきて、麻衣はほっとした。そして、いつものように、お湯を湧かそうとして‥‥‥。

（‥‥‥‥‥‥洗わなきゃ‥‥‥）

　勢い良く流れる水を掬って、顔を洗う。

　何度も、何度も。

　キモチワルイ。

　たかが頬にキスされたぐらいで、と思う。

　だが、あの、冷たい感触を思い出すと、気持ち悪くて、気持ち悪くて、我慢できない。何度洗っても、気持ち悪くて、仕方ない。

‥‥‥‥‥‥シカモ、ナル‥‥‥ノマエデ。

　ナルはどう思っただろう。いつもと変わらない横顔からはなにも感じられない。