first 15

 

「─────────帰ろう!」

 人混みをすり抜けて、麻衣はナルの腕を掴んだ。そして、そのまま、引きずるようにして店外へと飛び出した。

 

     ※

 

「‥‥‥‥‥‥‥ごめんね。‥‥‥ありがとう」

「ああ」

 

 車に乗り込んで交わした言葉はそれだけ。

 他にたくさん言いたいことがあったはずなのに、なにもかも消し飛んで、ぼんやりしている間に、麻衣は、ナルのマンションに連れて来られていた。自宅ではなく。

 

 ナンデ、ワタシ、ココニイルノカナ?

 

 疑問は、重苦しい空気に押しつぶされて、声にはならない。

 いや、重苦しいと感じているのは自分だけかもしれない。

 

 ドウシテ?

 

 付き合い初めて二月。マンションにはしょっちゅう出入りしているが、それは、付き合い始める前からで、ナルの健康管理を任されることもあったからだ。

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥lastkissmenu    back   next