first 14

 

 突然現れた美貌の青年を見つけて、店内のあちらこちらから歓声が上がる。

 待っていた。

 嬉しいはずだった。

 なのに、いまは‥‥‥‥‥‥。

 

「へえ、あれが、谷山さんの彼氏か。凄い男前だね」

 呆然と立ち尽くす麻衣を置き去りにして、青年は、楽しげに黒衣の青年へと歩み寄る。その冷たい眼差しに晒されても、平然と、笑みを返した。

「はじめまして、こんばんわ。主催者の水無月です。よろしかったら、少し、遊んでいきませんか?あなたのように綺麗な人が居てくれると盛り上がりますから、ぜひ」

「‥‥‥迎えに来ただけですので」

「怒ってます?」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

「彼女、とても可愛いですから、気を付けた方がいいですよ。狙ってるの、俺だけじゃないから‥‥‥」

 微かに眉間に皺を寄せて、ナルは店内へと歩を進める。

 その肩を、青年が掴む。

「忠告は聞いた方がいいですよ」

 さらに眉が顰められる。

 命知らずな行動だと、初対面の青年が知るわけがない。知っている麻衣は、その光景を見た衝撃で、硬直から解き放たれた。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥lastkissmenu    back   next