first 12

 

 自力で逃げるしかなさそうだ。

「望みはなさそうだね‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥ごめんなさい」

「うん、まあ、こればかりは仕方ないね」

 苦笑混じりに呟いて、青年はくるりと背を向けて、そのまま人混みに紛れてしまう。

 

(‥‥‥‥‥‥助かった‥‥‥‥‥‥)

 

 安堵の吐息を吐き出して、隣りを見る。

「‥‥‥‥‥‥小夜‥‥‥」

 大泣きである。

 気合いを入れたメイクが剥がれ落ちて、凄いことになっている。

 子供のように泣きじゃくる姿は可哀想で、慰めてあげたいのだが、この状況でどうしたらいいのか判断ができない。

 麻衣にとっては、突然で、迷惑なことではあったが。

(‥‥‥‥‥‥困った‥‥‥‥‥‥)

 しかも、立ち去ったはずの青年が戻って来た。

 

「今日の記念に、どうぞ」

 

 しかも、なんか差し出している。

 にっこり爽やかな‥‥‥有無を言わせない笑みを向けられて、とりあえず受け取ったカクテルは、鮮やかな、白。

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥lastkissmenu    back   next