first 11

 

 だから、どうして、初対面の青年がなんでこんなに間近にいるのか、どうして隣りで小夜が目を見張ったまま固まっているのか、麻衣にはまったく分からない。

「あの‥‥‥ごめんなさい」

「謝るようなことじゃないよ。さっきから、入口を気にしてるけど、もしかして、誰か迎えに来るのかな?」

「‥‥‥うん。そろそろ来る頃だから気になって」

「彼氏?」

 一瞬、麻衣は、悩んだ。

 彼氏彼氏彼氏‥‥‥‥‥‥似合わない。

「‥‥‥うん、まあ‥‥‥」

「残念だなぁ。もしかして付き合いだしたの最近じゃないかな?」

 なんでそんなこと分かるのでしょうか。

 疑問が顔に出ていたらしい。

「‥‥‥気になって見てたからね」

 苦笑して、なぜか、また、近付いてくる。

 麻衣は、後ろに下がろうとして‥‥‥壁にぶつかった。

「あの‥‥‥‥‥‥」

 助けて、という視線を向けると、小夜が泣きそうな顔をしていた。

 泣きたいのは私だって‥‥‥‥‥‥。

(‥‥‥‥‥‥来るんじゃなかった‥‥‥)

 咄嗟に入口に視線を向ける。

 だが、期待した人物の姿は、ない。

 

    ‥‥‥‥‥ lastkissmenu    back   next