first 10

 

 深夜、なんのついでがあると言うのか。

 突っ込みたかったが、嬉しかったので、黙った。

 だが、問題がないわけではない。

 一緒に飲みに行った友人から聞いてはいたが、酔っぱらった小夜は、ともかく絡む。連絡をしようとすると「まだ、駄目えええええぇぇ」と叫んで携帯を持って行ってしまうのだ。それを繰り返していたら遅くなりすぎて‥‥‥。

 

『‥‥‥‥‥‥ナル?‥‥‥遅くなってごめん。あの、遅くなり過ぎたし、悪いから、友達とタクシーで』

 帰る、と麻衣は言おうとした。しかし、

『そこで大人しくしてろ』

 携帯越しに冷気を浴びせられて、言えなかった。

 思い出すだけで、背筋が、ぞくぞくする。

 

‥‥‥‥‥‥と、いろいろ思い出していたので、麻衣は、まったく二人の会話を聞いていなかった。

 

「‥‥‥‥‥‥で、谷山さん、どう?」

「は?」

「聞いてなかったの?ひどいな。これでも、緊張してたんだけどな」

 聞いてなかった。

 まったく、少しも、全然。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥lastkissmenu    back   next