‥‥‥‥‥‥‥finish -3

 

 

「あ、見て見て、きれーい」

 外に視線を反らし、見送る人たちに手を振っていた麻衣は、空を見上げて、歓声をあげた。

  

 ぽーん。

 ぽーん。

 

 音を立てて、夕闇迫る天(そら)に、白い花が咲く。

 ふわり、と。

 柔らかく。

 

「‥‥‥‥‥‥花火?」

「花火っていうか、あれ‥‥‥」

「いや、あれは、花火って言葉で一括りにしてはいけないものでは‥‥‥」

 

 首を捻る面々に構わず、麻衣は、窓から乗り出して、叫ぶ。

 

「虹色のが見たーいっっっっ!」

 

 とたん、特大の、虹色の花が咲く。

 

「ありがとー」

 

 嬉しそうな麻衣に、メンバーは苦笑する。ナルたちが出掛けている間、眠り続けて心配させて、なにをやっていたのやら。

 なんとなく分かってしまうが‥‥‥。

 なんとなく聞きたくないような‥‥‥‥‥‥。

 それでも、なんとなく暖かな気持ちで、村を出ようとすると‥‥‥。

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥いつでも、嫁においで。

 

 なんか、聞こえた。

 暖かくて優しくて、情愛の滲みでる‥‥‥若い男の声で。

 

「な、なななななななななななな、内緒って言ったのにっっっっっ!」

 

 びしり。

 さきほどの良い雰囲気はどこかに消え失せた。

 そして、窓から身を乗り出していた麻衣は、引きずられるように車の中に押し込められ‥‥。

「‥‥‥‥‥‥前の車に乗らなくて正解でしたわ」

「ほんと‥‥‥‥‥‥」

「少年とリン‥‥‥哀れだな‥‥‥‥‥‥」

 しかし同情はしても、交代する勇気はない。

「‥‥‥‥‥‥途中休憩の時に、交代してくれっ、て泣きつくでしょうねぇ」

「別行動するか。綾子、ナルの携帯に連絡。俺らは遊んで帰るってな」

「分かったわ」

 

 かくして、天國と地獄に分かたれた二台の車は、夕闇に追い立てられるようにして、山間の里を後にした。

 

 

 

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