‥‥‥‥‥‥‥second -7
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‥‥‥‥‥‥貪りつくした柔らかな体が、傍らにある、と眠りの底を漂いながら知覚する。呼吸の変化で、目が覚めたことも分かる。 麻衣が、いま、なにを考えてるのか、それを予測することは難しい。予測しても、それを裏切る。良い意味でも、悪い意味でも、実例は幾つもあって、数えることすら馬鹿らしい。 それでも、なにを考えているのか、幾つかの予測を立てる。
夢だと疑っているのか。 後悔しているのか。 あるいは‥‥‥。
不意に、柔らかな髪が首筋に触れる。 猫のように擦り寄って来たのだと、理解する前に、声が響く。
「‥‥‥‥‥ナル‥‥‥‥大好き‥‥‥‥‥‥」
いまにも消えてしまいそうな声音が、付け足す。
「‥‥だから‥‥‥ずっと、側に居させてね‥‥」
誰にも聞かせるつもりのない願いが、静かに、優しく、響く。
しばらくすると、また、呼吸が変化した。 眠ってしまったらしい。 昨晩は無理をさせたので、今日は起き上がれないだろう。もっとも、たとえ、動けたとしても、ここからしばらくは出すつもりはない。 奴が怒り狂っていることは確実だ。 せめて、奴を消すまでは‥‥‥いや、違う。
『‥‥‥ずっと、側に居させてね‥‥‥‥』
夢現(ゆめうつつ)のたわごとだろうと、確かに、麻衣は願った。 ならば、叶えてやるのが親切というものだ。
さらさらと手触りの良い栗色の髪を撫でながら、ナルは目を開けた。 不穏な光りを相貌に宿して。
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