‥‥‥‥‥‥‥kd-9-5

 

 

 

 

 

 

 

 

暁の天(そら)に、

蝶が飛ぶ。

琥珀に閉じこめられて、眠っていた蝶が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ああ、なんて、綺麗だろう。

 金色に光っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

素晴らしい

この夜明け、

金色の蝶が導く先は、

海の遥か向こう側。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 行く先の保証はない。

 未来の保証もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 振り返れば、

積み重ねた大切なものが、

剥がれ落ちている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それを拾い集めることは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大切だけど、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無意味だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほら、崩れていく。

 ほら、壊れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕が無意味だと思うから、形を為さない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暁の天に、波が見える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さあ、行こう。

 さあ、行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 多くの犠牲を、

僕から君たちを奪った世界に払わせて、

僕は行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 謝って赦して貰えるはずもない罪を背負って、

行くよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暁の天に、影が過ぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 素晴らしく尾の長い、

どこにも居ないはずの獣に乗った、

僕と良く似た青年が、

僕を見ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 若いね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう言えば、当然だ、と返された。

さらに、老けたな、と余計な一言まで。

 

 相変わらずな彼が差し出した手を、僕は掴む。

 海の向こうで、

心配して待っている子が居るから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は行くよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海の向こう側、

月の裏側、

でも、

どこでもない場所に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だって、彼らは、僕の一部。

 なのに、引き離されて、奪われて、抉られた。

 だから、取り戻すんだ。

 僕の一部、僕のすべて、僕の生きる意味を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さあ、行こう。

 麗しい、僕らの王國へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2003.12.25

nanatuki

thanks

×

 

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end

 

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