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------------そして、翌日の深夜。 彼らは、ジーンにだけ見送られて、三人が暮らしたマンションのベランダから、旅立っていった。素晴らしく尾の長い、どんな生き物にも似ていない不思議な獣に乗って、遠い遠い場所へと。 冴え冴えとした月の美しい秋の夜、まもなく訪れる冬を感じながら、ジーンは、二人が溶けるように消えた夜を、ずっと、眺めていた。 あまりにあっけなく訪れた別れは、未だに、信じられない。 目が覚めたら、すべて、夢だといい。 そして、賑やかで楽しい至福の日々が永遠に続けば、他にはなにも望むことなどない。
『‥‥‥幸せになるんだよ』
囁いて、柔らかな頬に口づけて送り出した少女は、きっと、幸せになれる。 だって、誰よりも信頼できる片割れが側にいるから。‥‥‥‥‥‥でも、僕は、幸せになれるだろうか。二人がそう願っていることは知っているけれど‥‥‥‥‥‥。
「‥‥‥幸せになれるよう、努力はするよ。それで、いいかな?」
問いかけは、夜を裂く朝日に溶けて、ただ、虚しく響いた‥‥‥。
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