ふと、気が付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しんとうあい1〜

 

 

 

 

 

 

 

 ふと、気が付いたら、周りが笑っていた。

 自分も、笑っていた。

 つまらない冗談で、笑っていた。

--------嘘のようだった。

 心の支えであった偉大な三代目を喪ったあの時を思い起こせば、その後の、混乱していた時を考えれば、嘘のようだった。

 けれど、確かに、時間は過ぎていて。

 三代目が座っていた場所には五代目が座っていて。

 それが当たり前で。

 五代目も笑っていた。

 ‥‥‥ぐふふふふ、と、かなりあれな笑い方だったけど。

 でも、嘘みたいに、みんな、穏やかだった。

 ああ、乗り越えたんだ、と、今更ながらに思った。

 嬉しかった。

 戻らないものはあまりにも多いけれど。

 喪ったものも多いけれど。

 まだ哀しいけれど。

 寂しいけれど。

 嬉しかった。

 そして、心強かった。

 そこには、火が、在る。

 三代目の火を受け継いだ人が。

 そこに。

 

 

 

 

 

 

 

     ※

 

 

 

 

 

 

「‥‥‥うわきものーっっっっっっっっっっっっっ!」

 なにが起きたのか、イルカには、良く、分からなかった。

「このこの、可愛いからってなんでも許すと思ったら、大間違いですからねっ!」

 かわいこちゃんめ、と、なんか寒いことをほざいているのは銀髪の上忍。

 確か、十日程度の任務に出たばかりのはずだった。

 もう任務は終わったのだろうか。

 怪我はしなかっただろうか。

 ランクが高かったから。

 心配だった。

 いや、そんなことよりも‥‥‥。

--------どうして、ここに?

 ここは、確かに、狭くて古いけれど思い出と愛着のある自分の部屋で。

 自分は、寝ていて。

 彼を招き入れた覚えはない。

 なのに、どうして?

「そんなに乳がいいんですかっっっ!」

「は?」

 しかも言っていることがいつもよりさらにわけがわからない。

--------チチ?

--------父?

 なんか違う気がする。

「乳!乳!ならば、好きなだけ揉ませてあげますから、我慢しなさい!」

「へ?」

 わけがわからないことを叫ぶ上忍は、イルカの上にまたがったまま、凄い速さで印を結び始めた。

--------さすが上忍。

 うっかりイルカはそんなことを思ってしまっていた。

 寝惚けていたというのもある。

 また‥‥‥非常に哀しいことに、イルカは、慣れていた。

 わけがわからない上忍がわけのわからないことを言ったり叫んだりすることに、哀しいほどに、慣れていた。

 上忍の思考は良く分からない。

 それが、良く分からない上忍に振り回され続けたイルカの結論であった。

 ただ、分からないが、振り回すだけであまり害がなかったので、イルカは、とりあえずさせたいようにさせておくことにしていた。

 下手に止めようとするとさらに暴走するので。

 上忍の任務は過酷を極めるという。

 ならば、たまには、分からないことを叫んで暴れたくなるのも仕方ないじゃないか、などとも思っていた。

 だが、流石に‥‥‥。

 なんだかものすごい気迫が伝わってきて、イルカは、たらり、と、冷や汗を掻いた。

「‥‥‥あの、カカシさん、一体‥‥‥」

 問い掛けると、くわっっ、と、目を剥かれた。

 そして、なぜか、首を、ぶんぶん横に振っている。

--------わけが分からない。

「ほだされたりしませんからねっっっ!かわいこちゃんめっっっ!」

 しかもまた良く分からないことを言っている。

 なんだか、やっぱり、いつもよりおかしい。

 これは‥‥‥逃げるべきだろうか。

 ようやくイルカはそんなことを思った。

 だが、遅かった。

 くわわわわ、と、目を剥いて、カカシが叫ぶ。

「さあ、揉みなさい!」

 そして、イルカの視界は、真っ白に染まり、ずん、と、なにかがのしかかった。

 

 

       

 

 

 

 

 

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