甘いお菓子をほんの一口‥‥‥。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーン・パウダ ‥‥‥‥‥‥7

 

 

 

 

 

 

 

 

 真っ赤な熟れた果実のような顔のまま、意識を喪ったイルカを抱き抱えながら、カカシは、ごくり、と、喉を鳴らした。

 無防備になにもかも預けてあっさりと意識を喪ったこととか。暖かい体温とか。

 ほんの少し開けられた口の中の赤さとか。

 色々が、下半身を直撃していた。

(‥‥‥ほんと、かわいいねぇ)

 忍として、中忍として、どうよ、とは、思う。

 だが、この砂糖と蜂蜜にたっぷりとまみれたような甘さが、カカシは、愛しい。

 愛しくて愛しくて。

 頭からばりばりと食べたくなるほどに。

 誰とも分かち合いたくないほどに。

 けれど、いまは、まだ、駄目だ。

 まだ、コドモだから。

 でも、どうせいつかはオトナになるし。

 カカシが貰うことは決定しているのだから、つまみ食いぐらいは許されるだろう、と、カカシは思った。

 それに、カカシは、誕生日プレゼントを貰い損ねた。

 だから、これぐらいは。

--------いいよね。

 と、勝手に決めた。

 本人の意志とか、意識が無い、ということは、カカシの中では、まったく、問題が無かった。むしろ、丁度良い、と、思っていた。

 コドモには刺激が強すぎるから。

 眠っている間に済ませておけばいいよね、などと。

「‥‥‥いただきます」

 イルカ本人と、イルカを取り囲む人々が知ったら、ふざけるな、と、爆発しそうな結論に達して、カカシは、美味しい据え膳に手を合わせた。

 そして、おもむろに、イルカの下半身を剥いた。

「‥‥‥ここも、可愛いねぇ」

 黒い茂みに埋もれているソレに、カカシは、ちゅっ、と、音を立ててキスをした。途端、ひくん、と、ソレは震える。ソレを見て、カカシは、ぶるり、と、背筋を震わせた。

(‥‥‥かわいいっっっ!)

 さらには、なにか本人にだけにしか分からないツボを突かれて、身悶える。

 その姿は、まさしく、変態、変質者。

 だが、哀れなことに、誰も止めるモノは居なかった。

 よって、可愛いイルカのソレは、ちゅるん、と、カカシの口内に飲み込まれた。

 そして、あっと言う間に、立ち上げられてしまった。

「‥‥‥‥‥‥ん‥‥‥」

 そんなことをされれば、目が覚め掛けるのも当然であろう。

 だが、カカシは、いまさらなことに気が付いて、慌てて、ぎゅるり、と、眼を回した。赤い最強の目を。

「‥‥‥ん‥‥‥え‥‥‥あ‥‥‥」

 目が覚めて気が付いて驚いて現状を把握する前に、イルカは、また、ばたり、と、意識を喪った。そんなイルカを見下ろして、カカシは、はーっ、と、息を吐き出してから、立ち上がった可愛いソレに、また、ちゅっ、と、キスをした。

「‥‥‥ふふ、これで、大丈夫だね」

 イルカの匂いを満喫して、カカシは満面の笑みを浮かべた。

 そして、まだまだコドモなイルカが早くオトナになりますように、と、願いながら、意識の無いイルカの体を、一週間遅れの自分への誕生日プレゼントとして、目一杯堪能した。

 

 

     ※

 

 

「‥‥‥‥‥‥と、言うわけです。だから、イルカ先生がオトナになるまで待ちます。それでいいでしょ?」

 火影執務室にて、カカシは、任務の報告と一緒に、任務が終わった後になにをしていたか、という問いに答えた。そして、前回の無茶な命令を撤回してくれるようにお願いしていた。

 だが、それを聞いた美しい火影は‥‥‥。

「‥‥‥‥‥‥」

 あんぐり、と、口を開けたまま、動きを止めてしまった。

 ついでに、側に控えていた付き人も、静止してしまった。

 そんな二人の反応の意味が分からなくて、カカシは、首を傾げた。

--------なにかおかしなことを言っただろうか?

 否。

 特に変なことは言っていないはずだ。

 まあ、任務が終わった後に、すぐに報告しなかったのは、いけないことだったかもしれないが、イルカ先生にどうしても会いたかったのだから、仕方ない。

 そもそもあの命令が無茶苦茶なのだ。

 ちゃんと説明してくれれば良かったのだ。

「‥‥‥‥‥‥カカシ」

「はい」

 唸るような声で名を呼ばれて、カカシは、ちょっとだけ背筋を正した。

「‥‥‥‥‥‥それで、おまえは、寝ているイルカにナニをしたわけか?」

「え?‥‥‥やだなあ、五代目、俺、そこまで鬼畜じゃありませんよ。コドモのイルカ先生に突っ込むわけないじゃないですか。オトナになった時の為に、あちこちの感度を調べたりしただけですってば」

「‥‥‥‥‥‥」

「イルカ先生は、感度抜群でした。ついでに、ちょっと、慣らしておいてあげました。痛いのは可哀想ですから。これからもちょっとずつ慣らして行くつもりです」

「‥‥‥‥‥‥」

「五代目?」

 明るく報告するカカシとは反対に、美しい火影は暗かった。

 ずずん、と、周囲が真っ黒だった。

 そして、ぶつぶつとなにかを呟いている。

「‥‥‥‥‥‥四代目‥‥‥あんた‥‥‥こいつをどうやって育てたんだい。三代目も‥‥‥なんで矯正してくれなかったんだい‥‥‥あたしにどうしろって言うんだい。このバカを‥‥‥いまさらどうしろと‥‥‥」

「‥‥‥綱手様‥‥‥がんばって」

 付き人の声援を受けながら、綱手は顔を上げた。

 そして、どうしようもないコドモのままの馬鹿に‥‥‥。

「‥‥‥カカシ?」

「居ませんね」

「‥‥‥確か、イルカが寝込んでいるから、早く帰りたい、と、言っていたな」

「‥‥‥寝込まされているの間違いでは」

「ともかく、イルカの身が心配だ。あの馬鹿がこれ以上馬鹿なことをする前に‥‥‥力尽くでも、押さえ付けるしかあるまい」

 ふー、と、吐息をつきつつ、綱手は立ち上がった。

 だが、仕方なく立ち上がった綱手の後ろから‥‥‥。

 小さく、だが、なんとも言えない重みのある言葉が響く。

「‥‥‥でも、綱手様‥‥‥あのカカシさんが‥‥‥大人しく押さえ付けられてくれるでしょうか?」

「‥‥‥‥‥‥」

 綱手は、もう一度、座り込んだ。

 そして、天井を見上げて、遠い目をした。

 

 

 

‥‥‥その後、どこをどうやったのか。

 なにをどう聞いたのか。

 腕利き銀髪腕利き上忍の姿を見掛けると、五代目から直々に授けられたとっておきの術で、泣きそうな顔をしながら逃げる中忍の姿が、あちこちで見られるようになった。そして、中忍の住居は、素早く移動され、堅く秘された。

「‥‥‥なんで?」

 あまりにもあんまりなけれど実は自業自得な事態に、呆然と、髭の同僚に問い掛けたカカシは‥‥‥。

「てめえがコドモだからだろ」

 最もな忠告に首を傾げつつも‥‥‥決意した。

 カカシはこれでも我慢したのだ。

 三日も。

 なのに、誰も彼もが、カカシの言い分を全く聞かない。

 イルカと会う邪魔ばかりをする。

 もう、我慢も限界である。

 とりあえずは波風立てないようにしようと努力したのに、と、カカシは心中で諦めの吐息を吐き出して、素早く、策を練り上げる。

 そして、にたり、と、実にいやな笑いを浮かべて、一言も報告することのなかったマヌケなマホウツカイがくれた不思議な粉の入った瓶が入った内ポケットを、そっと、撫でた。

「‥‥‥おい、これ以上、五代目を怒らせるんじゃないぞ」

「りょうかい〜」

「‥‥‥嘘くせえ」

 ぼやく同僚に背を向けて、カカシは、とりあえず、今日も任務に向かう。そして、任務をとっとと終わらせて‥‥‥。

 ある事を企てるのだが。

 それは、また、別の話である。

 

   

 

 

   とりあえずEND

 

 

   

 

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