黒い夢-2

 

 

 

 

 

 その夜、カカシは、いつものように、人を殺した。

 ただし、いつもと少し違って、暗部の、里内の、任務だった。

 決して表に出てはいけない、上層部にとっては都合の悪い事実を、隠す為の、任務だった。

 それにカカシが選ばれたのは、万が一のことも許されないからだった。

 三代目を喪ってから、里は、五代目を得た。

 だが、まだ、まだ、すべてが元通りというわけではない。

 だから、里の奥深くに入り込んだ草の存在は、闇から闇へと消さなくてはならなかった。誰もが、里の弱体化を、実は、分かっていても、そんなことはないと表向きは示し続けなくてはならないからだ。

 そのことをカカシは良く知っているし、理解していた。

 任務は任務だと割り切れると自信があった。

 だが‥‥‥。

--------おさないこどものくびをおとし。

--------うまれるはずだったいのちをははおやごとほうむりさり。

 確実さを求めて、膨れた腹を割いて、始末をつけた時、なにかが、悲鳴を上げた。いまさらなことだったのに、けれど、いまだからだろうか、と、思いもした。

 カカシは、長く、暗部に在籍していた。

 その間は、こんな任務は日常茶飯事だった。

 罪科のない村を丸々一つ、焼き尽くしたこともあった。

 そのことについて、罪悪感など、感じたことはない。

 でも、カカシは、いまは、知っているのだ。

 思い出してしまったのだ。

--------おさないこどもはすなおであいらしく。

--------こどもはあいされるそんざいであると。

 いまは手元から離れてしまった子供たちとの、思い出が、カカシを、弱くさせていた。それはそれこれはこれ、と、割り切れているはずだったのに、なにかが、狂っていた。

 そして、それは、酷く、致命的なことのように思われた。

 カカシは忍だ。

 カカシは上忍だ。

 これからも同じ事がいくらでもあるだろう。

 留まっていることなどできないのだ。

 なによりも、それを、自分が、許せない。

 ほんの一瞬、刃を振り下ろすことを戸惑った、己の弱さが、憎くさえある。

 だが、どうしたら良いのか分からず、カカシは、座り込んでいた。

 自宅にも帰らず、自らの周囲に薄く結界を張って、薄暗い路地裏で、座り込んでいた。自らの中で、なんらかの決着が着くまで、カカシは、誰にも、なににも、会いたくなかった。

 自宅に居る、心を許している忍犬たちにも会いたくなかった。

 なのに。

--------パシリ。

 結界が、破られた。

 愚かな人が、カカシに、近付こうとした。

(‥‥‥ああ)

 しかも、その人を、カカシは、知っていた。

 その人は、鮮やかな光のような子供たちとの思い出と、深く、関わり合いのある人だった。

 どうして、と、カカシは、心中で、呻くように思った。

 どうして、よりにもよって、この人が、と、腹立たしくさえ思った。

 それは、八つ当たりに近い感情だったかもしれない。

 ケダモノと呼ばれる暗部にさえも、気遣いをする、気遣いができるままで居られるそのことが、腹立たしく、憎かった。

 万が一の為、カカシは、いま、髪を染めている。

 チャクラの質も微妙に変質させている。

 だから、イルカは、カカシだと知らない。

 つまり、イルカは、間違いなく、見ず知らずの暗部に、声を、掛けたのだ。

--------なんという愚かさだろう!

 カカシは、イルカが、一歩を踏み出した途端、決めた。

 威嚇を込めて気配を垂れ流しにしたのに、イルカは、近付いた。

 危険だと分かっているのに、踏み出した。

 ならば、どうされても、文句は言えない。

 カカシは、イルカの腕を掴み、路地裏に、引きずり込んだ。

 そうして、今度は、強固な結界を周囲に張り、同時に、イルカの下半身を、ツボを突いて、動けなくさせた。さらに、両手首を、ワイヤーで、拘束した。

 イルカは、なにが起こったのか、分かっていないみたいだった。

 だが、それは、丁度良かった。

 カカシは、イルカのズボンと下着を、引きちぎった。

 そして、尻を突き出す卑猥な格好を取らせて、腰を掴み、一気に、貫いた。

--------悲鳴が、響き渡った。

 血の香りが、漂った。

 確認などしなくても、イルカの其処が、切れたのは、分かっていた。

 だが、そんなことは、どうでもよかった。

 カカシは、腰を、振った。

 イルカの内側を、抉り回した。

 イルカは、泣き叫んだ。

 ひい、ひい、ひい、と、意味の為さない悲鳴を上げた。

「‥‥‥あんたが、悪いんだよ」

 聞こえていないと分かっていて、カカシは、告げた。

「‥‥‥ケダモノに近付いたら喰われて当然でしょ?」

 イルカの其処は、狭くて、きつくて、だが、気持ちよかった。

 血の滑りが、丁度良かった。

 逃げようと足掻くイルカの腰を強く掴んだまま、カカシは、出した。

 イルカの中へと、白濁を、注ぎ込む。

 途端、イルカの身体が、跳ねた。

「‥‥‥‥‥‥ひっ‥‥‥あ‥‥‥あつ‥‥‥あついっっ!」

 泣きながら、叫びながら、イルカは、逃げようとした。

 手首を拘束されて、動かない下肢を引きずって‥‥‥。

 カカシは、放出の余韻に浸りながら、少しの間だけ、イルカの好きなようにさせてやった。手の痕が付いた腰を、日焼けしていない尻が揺れるのを、ずるり、と、入れたモノが抜けるのを、見ながら。

 イルカの其処からは、血と白濁が、滴り落ちていた。

 芋虫のように這いずって逃げるイルカは、哀れだった。

 そして、卑猥だった。

 日焼けしていない尻の白さが、たまらない気持ちにさせた。

 滴り落ちるモノが、再び、熱を、取り戻させた。

 カカシは、逃げようと足掻くイルカの腰を、再び、掴んだ。

 そうして、血と白濁を滴らせる尻の狭間に、再び、立ち上がったモノを、ねじ込んだ。

--------悲鳴が、また、響き渡った。

 だが、カカシは、容赦はしなかった。

 いや、容赦することが、できなかった。

 イルカの身体は、恐ろしいほどに、気持ちが良かったのだ。

 二度目の挿入は、最初の痛いほどのきつさが無くなり、良い感じだった。

 注いだモノが、潤滑剤代わりになっているのも、丁度いい。

 それに、イルカは、男だ。

 孕むことを心配せずに、好きなだけ、腹の中に出せるのが、良かった。

 いまは、子供のことなど、赤子のことなど、なにも、考えたくない。

 だから、堅い身体を持つ男のイルカは、なにもかもが、丁度良かった。

 ひい、ひい、と、イルカが、鳴いている。

 ひい、ひい、と、イルカが、泣いている。

 哀れな声は、哀れみではなく欲情だけを増大させた。

--------これは、俺の獲物だ。

 脈絡のない、だが、強い気持ちが、沸いた。

 そして、カカシは、その気持ちを止める理由を思いつけなかった。

 がつがつとイルカを犯しながら、カカシは、どうしようか、と、考えていた。

 どうやってこの獲物でもっと遊ぼうか、と。

 ひい、ひい、と、イルカが、鳴いている。

 ひい、ひい、と、イルカが、泣いている。

 その尻に、再び、白濁を吐き出して、カカシは、嗤った。

「‥‥‥決めた」

 白濁を吐き出したのに、少しも萎えない自分を不思議に思いながらも、快楽に浸りながら、脳裏で、様々なことを決めていく。

--------これは、俺の獲物だ。

 戸惑いも罪悪感も哀れみも感じないままに、イルカにとっては、残酷なことを、なにもかも、決めていく。

--------これは、俺の、獲物だ。

--------ならば、もっと、美味くなるように仕込んでしまわないといけない。

 ひい、ひい、と、イルカが鳴いている。

 尻だけをむき出しにした卑猥な格好で、カカシをくわえ込んだまま、ひい、ひい、と、泣いている。逃げようと、まだ、無駄な足掻きをしている。

 もう、逃げられないとも知らずに。

 それが楽しくて愉快で、カカシは、嗤った。

 そうして、淫らな尻を掴んで、さらに、揺さぶった。

 ぐちゃぐちゃと響く淫らな水音と、イルカの悲鳴を聞きながら、嗤いながら。

 ケダモノの口の中に飛び込んだ、愚かな獲物を、ゆっくりと、租借した。

 

  

     ※

 

 

 なにが起きたのか、イルカには、分からなかった。

 暗がりの中に引きずり込まれたのも、手首を拘束されたのも、下半身を動けなくされたのも、下肢をむき出しにされて犯されたのも、唐突で、一瞬で、なにもかもがあまりにも、突然で、同時だった。

 男同士の情事については、イルカも知っていた。

 戦地では珍しいことでは無かったからだ。

 だが、木の葉では、他の里では当たり前のように存在している、上位者が下位の者を嬲るような悪習は存在しなかった。つまり、多少のごり押しはあるにせよ、表向きは、すべて、合意、と、言うことになっている。

 つまりは、する、しないは、本人の意思次第で、イルカは、男同士など考えることもできなかったので、誘われても、断っていた。

 だから、イルカは、本当に、始めてだった。

 あんな所に本当に入るのだろうか、と、疑っていたほどに、なにも、知らなかった。

 なのに、いま、イルカは、犯されていた。

 男に、犯されていた。

--------信じられなかった。

 脳味噌を赤く染め上げる痛みと感触を与えられながら、それでも、あまりにも突然過ぎて、イルカは、状況をまったく把握できていなかった。

 混乱していた。

「‥‥‥‥‥‥ひぃっっっ!」

 そして、混乱したまま、響き渡る悲鳴を、イルカは、聞いていた。

 誰かを受け入れることなど考えたこともない場所に、欲望をねじり込まれながら、痛みに引き裂かれながら、自分の悲鳴を、聞いていた。

 貫かれる痛みは、途方もなかった。

 拷問訓練も受けたことがあるのに、それとは、比較にならなかった。

「‥‥‥ひぃ‥‥‥ひぃ‥‥‥」

 逃げなくては、と、イルカは思った。

 でも、動けなかった。

 手首の拘束と下半身の痺れだけではなく、恐怖が、足止めをしていた。

 絶対的な上位者に組み敷かれて、足掻くことすら、恐ろしかった。

--------どうして。

--------どうして、こんなことに。

 痛みと恐怖で混乱しながら、イルカは、そんなことを思う。

 原因を探して、逃げ道を探して、けれど、だが、結局は、なにも、できなかった。

「‥‥‥ひぃ‥‥‥ひぃ‥‥‥」

 情けない悲鳴を上げながら、ただ、延々と、揺さぶられ続けた。

 そして、奥に、掛けられた。

 熱い、熱い、白濁を、奥に、たっぷりと、注がれて、さらに、悲鳴を上げた。

 あまりの熱さに、火傷したかのような、錯覚に、陥った。

 だが、同時に、ほっとしてもいた。

 やっと、終わった、と。

--------イルカは、その時、疑いもしていなかったのだ。

 自分は、運が悪かっただけだと。

 たまたま、その時だけだと。

 一夜の悪夢だと。

「‥‥‥決めた」

 イルカは、知らなかった。

 本当に、想像もしていなかった。

 悪夢が、真っ暗な悪夢が、これからを想像して、嗤っていたことなど。

 何一つ、本当に、知らなかったのである。    

     

   

 

 

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