寵愛-3

 

 

 

 

 朝、目が覚めて、イルカは、驚いた。

 すぐ間近に見知らぬ男の人の顔があることに驚いた。

 そして、すぐに、カカシさんなのだから当然だ、と、思った。

 けれど、とても、変だった。

 カカシさんと会ってからずっと一緒に居るのに。

 でも、その時間は、そんなに長くないはずなのに。

 もう、ずっとずっと居るような感じがした。

 そして、それにうっすらと覆い被さるように、別の記憶もあるのだ。

 一人で。

 たった一人で。

 生きていた時の記憶が。

 同じ時間に、二つの記憶があるようだった。

 変だった。

 おかしかった。

 混乱していた。

 なによりも、哀しかった。

 この平和で静かで嘘みたいに幸せな時間が、夢みたいで。

 すぐに消えてしまって、あの、一人きりの時間に戻るみたいな気がして、怖くて、怖くて、怖くて、仕方なかった。

 分かってはいるのだ。

 カカシさんは、任務の為に、ここに居て。

 自分は、本当は、もっと大きくて。

 これは、この時間は、術が、解けるまでの幻なのだと。

 でも、哀しかった。

 分かっていても、哀しくて、イルカは、ぎゅっと、優しくて多分とびきりに強い男にしがみついた。

「‥‥‥どうしたの?」

「‥‥‥」

 答えられなかった。

 早く術が解けた方が良いのだと分かっているから、この時間が長く続けばいい、なんて思っていることは、言えなかった。

「ちょっと大きくなったね。ちょっと大きくなったイルカも可愛いね」

 優しく頭を撫でられて、ぎゅっと抱き締め返されると、気持ちよくて、たまらなかった。いつまでもいつまでもこの暖かさの中に沈んでいたかった。

 そんなことは駄目だと思うのに。

 気持ちよくて。

 暖かくて。

 溶けていく。

「‥‥‥ふふ、とろとろだね。本当に可愛いな。今日は、もうちょっと寝ていようか。大きくなって、イルカも、混乱しているみたいだしね。大丈夫、すぐに、昔の記憶は、馴染んでいくよ。‥‥‥なんにも心配いらないよ」

 暖かい手が、よしよしと宥めるように、背中を撫でてくれる。

 うんと小さな子供になったようでイルカは恥ずかしかった。

 でも、気持ちよくて、暖かくて、もっと、触ってほしかった。

 もっと、その、暖かい手で、撫でて欲しかった。

 でもそんなこと言えるわけもなく。

 ただ、ぎゅっとしがみついていた。

 けれど、イルカの気持ちなどお見通しなのか、暖かい手は、ずっと、イルカを撫でてくれていた。

「‥‥‥気持ちよい?」

「‥‥‥うん」

 夢心地なにかを問われた気がしたけれど、良く分からなかった。

「‥‥‥馴染みが早いね。可愛いな。どこが一番気持ち良い?」

「‥‥‥せなか」

「ふうん。背中か。‥‥‥早く、違う所が気持ちよくなってくれると助かるんだけどな。そろそろ限界だよ」

「‥‥‥ちがう?」

「うん。違う所。大丈夫、あともうちょっとだから。それまでは、優しいだけのカカシさんで居てあげるから、おやすみ。可愛い小さい俺だけのイルカ先生」

「‥‥‥せ‥‥‥ん‥‥‥せ?」

「でも、寝ている間に、ちょっと悪戯はさせて貰っているけどね。だって、犯罪でしょう、この可愛さは。可愛くて可愛くて食べちゃいたいな」

「‥‥‥‥‥‥」

「ふふ、可愛い。子供はねんねの時間だね。じゃあ‥‥‥‥‥‥」

 

 

     ※

 

 

 イルカは、奇妙な夢を見ていた。

 どうしてそんな夢を見るのか、まったく分からなかったけれど、見ていた。

「‥‥‥んっ‥‥‥あっ‥‥‥あっ‥‥‥」

 奇妙な声が、自分の口から、出ていた。

 熱くて、気持ちよくて、だるくて、どうしたら良いのか分からなかった。

 特に、下が、下半身が、なんだか、変だった。

 奇妙な音が響いていた。

--------ぴちゃ。

--------ぴちゃ。

--------じゅるるる。

 なにかを舐める音がした。

 なま暖かいなにかの感触がした。

 どうしたら良いのか分からなくて、なんだか、見るのが、怖かった。

「‥‥‥ふふ、可愛いな。まだ、出ないんだね」

 でも、声が聞こえたから、カカシさんの声が聞こえたから、おそるおそる視線を向けた。カカシさんは、うんと近くにいた。

 どうしてか、イルカの足を抱えて、イルカの股の間に視線を向けて、嬉しそうに笑っていた。とてもとても嬉しそうで楽しそうだった。

「‥‥‥か‥‥‥かし‥‥‥さん‥‥‥」

「あ、おはよう」

「‥‥‥おはようございます?」

 なんかおかしいと思ったけれど、反射的に挨拶を返した。

 すると、可愛い可愛い、と、頬を撫でられた。

「ちょっと‥‥‥ねぼけているね。可愛いな。‥‥‥キモチイイでしょう?」

 きゅっと体の中心に生えているモノを、柔らかく握られた。

 途端、ぞくぞく、と、奇妙な感覚が背筋を走った。

 なんだかよくわからなかった。

 驚いた。

「‥‥‥ひゃあっ!」

「‥‥‥ちゃんとした声が聞けるのはいいね。これからは、寝ぼけイルカに相手して貰おうカナ。もうそろそろ大丈夫そうだしね」

「‥‥‥ひゃ‥‥‥あ‥‥‥あ‥‥‥あ」

 熱くて、熱くて、もどかしくて、なにがなんだか分からなかった。

 ただ、もう、熱くて、たまらない。

「‥‥‥あ‥‥‥あ‥‥‥あ」

 そして、なにかが出そうだった。

 出したら駄目なのに。

 カカシさんが、口にくわえているから、だめなのに。

 汚いのに。

 だめなのに。

「‥‥‥か‥‥‥かしさ‥‥‥ん」

 だめなのに。

 離して貰えなくて。

「‥‥‥はな‥‥‥して‥‥‥」

 もっといっぱい舐められた。

--------じゅる。

--------じゅる。

 なま暖かい感触がして、気持ちよくて、たまらなくて、もう我慢できなかった。

「‥‥‥ひあああっっっ!」

 頭の中がまっしろになって、たくさん、いっぱい、出た。

 どうしよう。

 どうしよう。

 どうしよう。

 どうしよう。

 どうしよう。

 そう思うのに。

「‥‥‥あ‥‥‥あ‥‥‥あ‥‥‥」

 気持ちよくて。

 熱くて。

 気持ちよくて。

 気持ちよくて。

 気持ちよくて。

 気持ちよくて。

 止まらなかった。

「‥‥‥あ‥‥‥」

--------じゅる。

 そして、最後に強く啜られて、なにもかもを出し尽くした。

「‥‥‥‥‥‥」

 イルカは、もう、なにも考えられなくて、しばらく、ぼうっとしていた。

 体中が、ふわふわしていて、力が入らなかった。

「‥‥‥可愛いな。始めての射精は気持ちよかったみたいだね。美味しかったよ。また、飲ませてね。そのうち、俺のも、いっぱい、飲ませてあげる」

 可愛い可愛いと声が聞こえて。

 頭も頬も体中を撫でられた。

 暖かくて気持ちよかった。

「‥‥‥さて、じゃあ、今日も、こっちを慣らそうか。大丈夫、すぐに、こっちもうんと気持ちよくなるからね」

 なにかを言われているけれど、イルカには良く分からなかった。

 ただ、暖かいなにかを、お尻の間に感じた。

「‥‥‥ん」

「早く、ここに、俺のを射れてあげたいよ。でも、いまは、小さいから、我慢してあげる。こんな小さな棒しか入らないんじゃ、裂けちゃうしねぇ」

「‥‥‥ん‥‥‥ん」

「暖かくて気持ち良いでしょう?‥‥‥男娼を仕込む為の特製だからねぇ。しかも、俺が改良してあるし‥‥‥ふふ、すぐに天国に行けるようになるよ」

「‥‥‥ん‥‥‥」

「小さい手だねぇ。可愛いねぇ。‥‥‥ほら、いつものように、俺のを握ってね。可愛い下のお口に突っ込まれて、痛い思いをしたくないでしょう?」

「‥‥‥あ‥‥‥ん‥‥‥」

「そうそう。上手。‥‥‥ほら、両手で。お尻の棒もいじってあげるから、ほら、頑張って」

「‥‥‥ん‥‥‥んん」

 熱くて、熱くて、なにもかもが熱くて、イルカは、もう、なにがなんだか分からなかった。ただ、なま暖かいお湯の中に全身を包まれて、大好きなカカシの声に従って、わけがわからないままに動いていた。

 そして、熱いなにかを体中に掛けられて。

 いっぱい誉められて眠りについた。

 

 

     ※

 

 

 朝、目が覚めて、イルカは、驚いた。

 すぐ間近に見知らぬ男の人の顔があることに驚いた。

 そして、すぐに、カカシさんなのだから当然だ、と、思った。

 そして、さらに、なにか、奇妙な夢を見た気がしたけれど、思い出せなかった。

 いや、どうでもよかった。

 カカシさんの腕の中は暖かくて気持ちよくて。

 なにも考えていられなかった。

『‥‥‥おやすみ。すべて夢だよ』

 なにかを聞いた気がするけれど。

『‥‥‥可愛い小さい俺だけのイルカ先生。うんといっぱい可愛がってあげるから良い子で居てね』

 なにも。

 なにも。

 なにも。

 なにも。

 思い出せなかった。

 そして、すべては。

 赤い赤い赤い赤い闇に溶けた。

 

 

 

 

 

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