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 魂の孤独

 

 

 

 

 

 魂の孤独。

 そう言われた。

 おまえは、魂の孤独を味わうだろう、と。

 

 商店街の片隅、普通の、占い師のおばあさんに見えた。

 でも、違った。

 あれは、夕暮れ時に現れる、出会ってはいけないもの。

 

------魂の孤独。

 

 それは、でも、なんだろう。

 たとえば、いま、私には、家族みたいに接してくれる人たちが居る。

 とても、大切。

 とても、幸せ。

 

------魂の孤独。

 

 そして、好きな人も、居る。

 振り向いてはくれないかもしれないけれど。

 もしかしたら、この気持ちは、偽りかもしれないけれど。

 でも、いま、確かに、好きだと思う。

 

------魂の孤独。

 

 なのに、私は、孤独なんだろうか。

 それでも、寂しい、と思っているのだろうか。

 

「馬鹿か、おまえは」

 

 数日後、聞いてみたら、呆れ果てた目で見られた。

 

「‥‥‥どうせ、馬鹿ですよーだ」

 

 あとで渋いお茶を煎れてやる、と思いつつ、所長室を出ようとしたら、

 

「‥‥‥誰でも、同じだ」

 

 低い声が、追いかけてきた。

 

「同じ?」

「そもそも魂の定義が怪しいが、では、孤独ではない魂とはなんだ?」

「‥‥‥う」

「一人が寂しいのならば、二人ならばいいのか?」

「‥‥‥」

 そう的確に突っ込まれても困る、という視線を返すと吐息が返ってきた。

「人間は一人で生まれて、一人で死ぬ。当たり前なことに悩むな」

 でも、そういう彼は、二人で生まれて来た。

 誰よりも強い繋がりを持つ、彼が、居た。

 でも、彼は‥‥‥‥‥‥。

 

 

 

 

------魂の孤独‥‥‥。

 

 

 

 

 それを与えられるということは、奪われる時があるということ。

 いま、私は、孤独を感じていないということだ。

 つまり、きっと、そういうことなのだろう。

 ‥‥‥そういうことにしておこう。

「ナル、ありがとう」

「‥‥‥二度と、馬鹿な戯れ言に引っかかるなよ」

「うん、でも、ちょっと感謝しなきゃ」

「なぜ?」

「だって、ナルが慰めてくれるなんて、珍しいし」

「‥‥‥‥‥‥」

 それに、いま、胸の内が、暖かい。

 いつか、それが、消える時が来るかもしれないけれど‥‥‥。

 魂の孤独とやらを味わうかもしれないけれど。

 

 いまは、幸せ。

 いまは、孤独じゃない。

 眉間に皺寄せた、ナルが、そこに、居る限りは。

 

 

 

                    

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