sss 12

 

 

 

 

 

 

 朝、珍しいモノを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 morning-sleep

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 論文の締め切りは昨日。

 修羅場明けの朝、ナルは、いつもどおり起きて来た。

 今日、事務所はお休み。

 だから、もっと寝ていればいいのに、と思う。

 けど、私は、言わない。

 だって、ねえ、勿体ない。

 こんな貴重な姿は、滅多に見られないし。

 ナルは、いつものように、分厚い書類を持って、ソファに座っている。

 いつもどおりに見える。

 でもね、分かる。

 このナルは、寝惚けナルだって。

 どうして分かるかと言うと‥‥‥。

 まず、視線が、うつろ。

 書類は持っているだけ。

 そのままの姿勢で、しかも、なにも言わない。

 目は開けてるけど、寝てるよ、この人。

 そんなに眠いなら寝ていればいいのに、どうして起きて来るのかな。

 しかもいつもどおり振る舞うなんて、変なの。

 いや、でも、眠そうで仕方ないナルというのも‥‥‥なかなか寒いものが。

 まあ、どちらにせよ、面白いので、声なんか掛けない。

 下手に刺激すると、根性で、いつもどおりになってしまう人だから。

 それに、そうっとしておくと、もっと楽しい姿が見れると分かっているから、絶対に起こさない。

 ほら、もう、そろそろだよ。

 うわ、眠そう。

 ‥‥‥なんかかわいいよね〜。

 あ、ほらほら、もう少し‥‥‥。

 

 

------------ぱたん。

 

 

 ほうら、寝た。

 ナルが眠る瞬間なんて、本当に、珍しいよね。

 しかも、書類を床に落とすなんて、嘘みたい。

 しかもしかも、なんか、寝顔が可愛いの。

 気のせいかもしれないけどね。

 ま、とにもかくにも、お疲れさまでした。

 ゆっくり寝てね。

(‥‥‥おやすみなさい)

 柔らかなタオルケットをふわりと掛けて、頬にキスを一つ。

 良い夢が見れますように、と私は祈る。

 そして、彼の邪魔にならないように、家事は中断。

 私も、一緒にお昼寝タイム突入。

(‥‥‥おやすみなさい)

 目が覚めたら、一緒に遅い朝食を食べようね。

 

 

 

 

 

end

 

                               

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