first 5

 

 呼ばれて、顔を上げて、駆け寄ると、綺麗な綺麗な漆黒の相貌が、じっと見つめる。

「どうした?」

「ううん、別に。‥‥‥今日はなにを作ろうかな」

 

 ぞくり。

 

 背筋が、急に、冷えた。どうしてかは分からない。風が冷たかったのかも。

「‥‥‥‥‥‥麻衣?」

「なんでもない。早く、行こ」

 腕を掴むと、額にキスされた。

「こ、こここここここここここ‥‥‥は、路上なんですがっっっ」

「だから、額」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 いつもこんな感じなので、ぼーさんたちにばれる日は近い。

 その時が楽しみなような‥‥‥恐いような。

 

     ※

 

‥‥‥‥‥‥本人たちの自覚はともかくとして、見目麗しい青年と可愛らしい少女はバカップルぶりを披露しつつ、そこから立ち去った。

 そこ、とは、路上。

 そこ、とは、街中。

     ‥‥‥‥‥lastkissmenu    back   next