あれからナルは、たくさんキスをする。ものすごく意外なことに、所構わずなので、少し、困る。でも、よくよく考えたら、ナルはキスが挨拶の国からやって来た人なので‥‥‥いや、でも、やはり、意外だ。

　それから私たちは、たぶん、付き合っているのだと思う。

　バイトが終わると途中で買い物をして、ナルのマンションで一緒に夕飯を食べるのはいつものことだし、お昼も一緒に食べることが多い。でも、夜は、ナルに車で自宅まで送って貰って、帰る。

　一線を越す覚悟は、できてるような、できていないような。

　ただ、なんとなく、しない。

　ナルがどう思っているのかは、分からない。

　第一、どうしてキスするのかも良く分からないのだ。

「どうしてキスするの？」

　聞いたら、

「‥‥‥‥‥‥したかったから」

　というお答えを頂いた。

　ナルらしくて笑えて、らしすぎて、それ以上聞けなかった。

　私たちが付き合っていることは、まだ、いつものメンバーには教えてない。

　ただ、一人だけ、真砂子には‥‥‥言った。

　それがけじめだと思ったから。

　でも、付き合ったきっかけを話したら、ものすごく変な顔をしていた。