視る カカシver

 

 

 

 不意に、カカシは、気が付いた。

(‥‥‥そういえば、イルカ先生からのおねだりって、して貰ったことが、無いような?)

 押して押して押して押しまくって引き倒すように落とした恋人を、カカシは、溺愛している。その気持ちの良い体に溺れて、その真っ直ぐな懐の広い心にも、溺れている。だから、隙さえ有れば、カカシは、イルカを、押し倒しているので、セックスしている回数は、多い。もう、数え切れないほどだ。

 だが、しかし、その甘ったるい時間をどれだけ思い起こしても、カカシは、イルカから誘ったという場面を思い出すことができなかった。

 どちらかというと、仕事が、とか、腰が、とか、そんな理由で逃げようとしているイルカしか思い出せない。なんだか、物凄く、理不尽な気がした。なんとなく哀しい気がした。

 なので、カカシは、イルカに薬を盛った。

 そうして、待った。わくわくしながら。

 だが、イルカは、カカシにちらちらと視線を向けるが、なかなか、誘ってくれない。本を読む振りをしながら、なんでもない顔をしながらも、カカシは、もっと強烈なのをたくさん盛れば良かったと激しく後悔していた。

 それは、本当に、生殺し状態だった。

 イルカからの視線を感じるのに、我慢するなんて。

 馬鹿馬鹿しい、と、思った。

 けれど、でも、どうしても、イルカから誘って欲しかった。

 イルカも自分を欲してくれているのだと示して欲しかった。

 だが、イルカは、なかなか、なかなか、近付かない。

(‥‥‥もう、押し倒しちゃおうかな〜)

 焦れたカカシは、脳内で、イルカへの八つ当たり混じりのお仕置きを考え始めた。可愛い、大好きだ。でも、哀しい。だから、酷いことをたくさんしてしまいそうで、少し、怖い。

(‥‥‥ねぇ、俺のこと、好きでしょ?なら、早く、誘ってよ)

 酷いことはしたくないんだから、と、カカシは心中でぼやく。

 暫くすると、その願いがようやく届いたのか、イルカが、カカシに近付き始めた。これ以上はないほど、カカシは、緊張して、イルカからの接触を待ち侘びた。

 だが‥‥‥‥‥‥。

「‥‥‥本、読んでていいですから、触らせてくださいね〜」

 接触は接触だが、接触違いだった。

 イルカは、カカシの頭を、撫でただけだった。

「‥‥‥相変わらず、ふわふわですね〜」

「‥‥‥そう来ますか」

「本、読んでて下さいね。俺は、ふわふわを堪能したいんです」

「‥‥‥期待してたのに‥‥‥」

「それは後で」

「後なんですか。後からあるんですか‥‥‥」

「ふわふわを堪能するのが先です」

「‥‥‥はいはい。じゃあ、たっぷり堪能してください。我慢します。その代わり、次は、俺が、イルカ先生を堪能します」

「‥‥‥」

 薬を間違えたかも、と、カカシは、思った。

 いくらなんでもこれはあり得ないだろう、と。

(‥‥‥く、くそうっっっ)

 期待した分だけ落胆は激しく、カカシは、心中で呻いた。

 そうして、焦らされた分だけ絶対に取り返す、と、心に誓った。  

「分かりました」

「‥‥‥へ?」

「じゃあ、もうちょっと堪能させてくださいね」

「‥‥‥い、イルカ先生?」

「もうちょっと」

「‥‥‥いや、あのね、そんなこと言われたら、我慢が‥」

「もうちょっと。前向いてください。本を読んでて下さい」

「‥‥‥ううう、結局、生殺しなんですね。視姦してくれているのかと期待したのにー」

「多分、視姦してましたよ。いっぱいやらしいことを考えてました。なんか今日は、すごく、したくて、どうやって誘えばいいのかなぁと困ってました」

「‥‥‥っっっ!」

「でも、いまは、ふわふわが重要です。動かないでください。こっち向かないでください」

「‥‥‥なま、なまごろしーっっっっっ!」

 薬は、どうやら、間違えてはいないようだった。

 振り返ったイルカの目は、確かに、欲情していた。

 なのに、どうして、そうなるのか、カカシには、さっぱり分からない。

 分かるのは、イルカに薬を盛ると、ダメージを受けるのは、自分だということだけだった。

(‥‥‥うわーん、やりたい〜やーりーたーいー)

 後少しの我慢が、耐えられなくて、でも、頭を撫でる手は気持ちよくて逃げられなくて、カカシは、悶えた。悶えるのはイルカ先生のはずだったのに、と、心中でさめざめと泣きながら。

 

 

 その後、自業自得とはいえ、我慢に我慢を重ねたカカシが、暴走したことは、語るまでもない。

 

 

 

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